日日遊心

幸田露伴の歴史小説【運命】の現代語勝手訳その他。Done is better than perfect.無断転載お断り。

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

幸田露伴「運命」10

はじめ太祖、太子に命じたまいて、章奏を決せしめられけるに、太子仁慈厚くおわしければ、刑獄に於て宥め軽めらるゝこと多かりき。太子亡せたまいければ、太孫をして事に当らしめたまいけるが、太孫もまた寛厚の性、おのずから徳を植えたもうこと多く、又太…

幸田露伴「運命」9

明の建文皇帝は実に太祖高皇帝に継いで位に即きたまえり。時に洪武三十一年閏五月なり。すなわち詔して明年を建文元年としたまいぬ。御代しろしめすことは正しく五歳にわたりたもう。然るに廟諡を得たもうこと無く、正徳、万暦、崇禎の間、事しば〳〵議せら…

幸田露伴「運命」 8

賽児は蒲台府の民林三の妻、少きより仏を好み経を誦せるのみ、別に異ありしにあらず。林三死して之を郊外に葬る。賽児墓に祭りて、回るさの路、一山の麓を経たりしに、たま〳〵豪雨の後にして土崩れ石露われたり。これを視るに石匣なりければ、就いて窺いて…

幸田露伴「運命」7

女仙外史の名は其の実を語る。主人公月君、これを輔くるの鮑師、曼尼、公孫大娘、聶隠娘等皆女仙なり。鮑聶等の女仙は、もと古伝雑説より取り来って彩色となすに過ぎず、而して月君は即ち山東蒲台の妖婦唐賽児なり。賽児の乱をなせるは明の永楽十八年二月に…

幸田露伴「運命」6

女仙外史一百回は、清の逸田叟、呂熊、字は文兆の著すところ、康熙四十年に意を起して、四十三年秋に至りて業を卒る。其の書の体たるや、水滸伝平妖伝等に同じと雖も、立言の旨は、綱常を扶植し、忠烈を顕揚するに在りというを以て、南安の郡守陳香泉の序、…

幸田露伴「運命」5

我が古小説家の雄を曲亭主人馬琴と為す。馬琴の作るところ、長篇四五種、八犬伝の雄大、弓張月の壮快、皆江湖の嘖々として称するところなるが、八犬伝弓張月に比して優るあるも劣らざるものを侠客伝と為す。憾むらくは其の叙するところ、蓋し未だ十の三四を…

幸田露伴「運命」4

古より今に至るまで、成敗の跡、禍福の運、人をして思を潜めしめ歎を発せしむるに足るもの固より多し。されども人の奇を好むや、猶以て足れりとせず。是に於て才子は才を馳せ、妄人は妄を恣にして、空中に楼閣を築き、夢裏に悲喜を画き、意設筆綴して、烏有…

幸田露伴「運命」3

定命録、続定命録、前定録、感定録等、小説野乗の記するところを見れば、吉凶禍福は、皆定数ありて飲啄笑哭も、悉く天意に因るかと疑わる。されど紛々たる雑書、何ぞ信ずるに足らん。仮令数ありとするも、測り難きは数なり。測り難きの数を畏れて、巫覡卜相…

一杯の珈琲から

ソロキャンプの動画が好きでよく見る。 ソロキャンプの動画といっても様々だ。厳冬の雪原の中のサバイバル色の強いもの。 食って飲んでのんびり一晩テントで過ごすだけのもの。また日帰りの一人ピクニックみたいなのもある。しかしこうした動画を見ているう…