日日遊心

幸田露伴の歴史小説【運命】の現代語勝手訳その他。Done is better than perfect.無断転載お断り。

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

幸田露伴「運命」23

【訳】 天か時か燕王の胸中には暴風吹き荒れ黒雲も飛びたいと欲し、張玉、朱能らの猛将梟雄も眼底に閃光閃いて雷も走るばかりであった。燕府に殺気が満ちるに際して天もまた応じたか、それともそういう時機であったか、強風に豪雨が突然襲った。 ひゅうひゅ…

幸田露伴「運命」22

【訳】 建文元年正月、燕王は長史葛誠〜奏せしめた。誠は帝のためつぶさに燕邸の実情を告げた。ここにおいて誠を~燕に帰らせて内応させた。燕王はさとってこれに備えた。二月になって燕王が参内した。天子の通る道を通り宮殿の階段をのぼって拝せない等、不…

幸田露伴「運命」21

【訳】 建文元年二月、諸王に対し詔があり、文武の役人を切り詰め、官制を改定させないようにした。これもまた諸藩を抑えるための一つの方法であった。夏四月西平侯沐晟が岷王梗が法を破ったことを奏した。よってその護衛を削り、その指揮官宗麟を死刑にし、…

幸田露伴「運命」20

【訳】 諸国がいよいよ削奪されるのが明らかになると十二月になって前軍都督府断事の高巍という者が上書して政を論じた。巍は遼州の出身で節を守り文章が上手かった。才能はそれほどでもないが性格良く、母の蕭氏に仕えて孝行し称賛され洪武十七年表彰された…

幸田露伴「運命」19

【訳】 帝のそばには黄子澄と斉泰がいて、諸国を削奪しようとする。また燕王のそばには僧の道衍と袁珙がいて秘謀を巡らす。両者の関係はもうこんな風で、~。諸王に不穏な動きがあるとの噂が朝廷に聞こえることが頻繁だったので、ある日帝は子澄を呼んで、昔…

幸田露伴「運命」18

【訳】 帝のために密かに計画する者は誰か。黄子澄と斉泰である。子澄のことは既に書いた。斉泰は~出身で洪武十七年よりようやく出仕した。建文帝が帝位につくと子澄とともに帝の信頼を得て国政に参加した。諸王が入京し会葬するのを禁じた時諸王は皆斉泰が…

幸田露伴「運命」17

【訳】 太祖が崩御したのは閏五月で、諸王が都に入るのを許されず不快に思いつつ帰国した後、六月になって戸部侍郎卓敬なる者が内密に帝に上書した。卓敬は字を惟恭といい、書を読めば~と言われたほど聡明で、天文地理より法学暦学兵学刑法に至るまで極めな…