日日遊心

幸田露伴の歴史小説【運命】の現代語勝手訳その他。Done is better than perfect.無断転載お断り。

2020-01-01から1年間の記事一覧

幸田露伴「運命」2

秦の始皇帝、天下を一にして尊号を称す。威燄まことに当る可からず。然れども水神ありて華陰の夜に現われ、璧を使者に托して、今年祖龍死せんと曰えば、果して始皇やがて沙丘に崩ぜり。唐の玄宗、開元は三十年の太平を享け、天宝は十四年の華奢をほしいまゝ…

【掌小説】蛍

夫が亡くなりましたのはもうかれこれ10年になりますか、はい、そうです、高校の英語の教師でした。退職してからは翻訳の仕事をして本も何冊か出しました。それはもう根っからの学者肌といいましょうか、分厚い辞書に囲まれて朝から晩まで机に向かっておりま…

ベートーベンの「厳粛」

‪以前、ラジオの番組表を見ていたらふと目が止まった。 ベートーベンの弦楽四重奏曲「厳粛」とある。‪厳粛?はて、そんな曲あったっけと一瞬首を傾げたがすぐに気づいた。 どうやら「セリオーソ」のことらしい。‪しかしいつの間にこんな風な呼称になったのだ…

幸田露伴「 運命」1

世おのずから数というもの有りや。有りといえば有るが如く、無しと為せば無きにも似たり。洪水天に滔るも、禹の功これを治め、大旱地を焦せども、湯の徳これを済えば、数有るが如くにして、而も数無きが如し。 世の中に果たして天命というものはあるのであろ…