日日遊心

幸田露伴の歴史小説【運命】の現代語勝手訳その他。Done is better than perfect.無断転載お断り。

幸田露伴【運命】40

【訳】

呉傑、平安は、盛庸の軍の救援に向かおうとして、真定より兵を率いて出たが、あと八十里というところで盛庸の敗れたことを聞いて真定へ戻った。

燕王は真定の攻めがたいのをみて~と流言して、呉傑らを誘い出した。

呉傑らはこれを信じてついに滹沱河に出た。

王は河を渡り河の流れに沿って行軍すること二十里、呉傑の軍と藁城で遭遇した。

実に閏三月己亥のことである。

翌日両軍は大いに戦った。

燕将・薛禄は奮闘し活躍した。

王は勇猛な騎馬隊を率いて呉傑の軍に突入し、大呼しつつ猛攻撃した。

南軍は矢を飛ばすこと雨の如く、王の建てた旗に矢が降り注ぎ、燕軍は多くの者が傷ついた。

だが王は屈せず、いよいよ突撃した。

するとまた暴風が吹き荒れ、樹を抜き家を吹き飛ばした。

燕軍はこれに乗じ、呉傑らは敗走した。

燕兵はこれを追い、真定城下まで来て驍将・鄧戩、陳鵰らを捕虜にし、六万余りを斬首、すべての物資や器械を得た。

王はその旗を北平に送り、世子に諭していった、これをしっかり保管して後世の者が忘れることのないようにせよと。

 

※訳文中の〜は不明箇所。

 

【原文】
呉傑、平安は、盛庸の軍を援けんとして、真定より兵を率いて出でしが、及ばざること八十里にして庸の敗れしことを聞きて還りぬ。

燕王、真定の攻め難きを以て、燕軍は回出して糧を取り、営中備無しと言わしめ、傑等を誘う。

傑等之を信じて、遂に滹沱河に出づ。

王河を渡り流に沿いて行くこと二十里、傑の軍と藁城に遇う。

実に閏三月己亥なり。

翌日大に戦う。

燕将薛禄、奮闘甚だ力む。

王驍騎を率いて、傑の軍に突入し、大呼猛撃す。

南軍箭を飛ばす雨の如く、王の建つるところの旗、集矢蝟毛の如く、燕軍多く傷つく。

而も王猶屈せず、衝撃愈急なり。

会また暴飇起り、樹を抜き屋を飜す。

燕軍之に乗じ、傑等大に潰ゆ。

燕兵追いて真定城下に至り、驍将鄧戩、陳鵰等を擒にし、斬首六万余級、尽く軍資器械を得たり。

王其の旗を北平に送り、世子に諭して曰く、善く之を蔵し、後世をして忘る勿らしめよと。

 


【感想】
燕王、鬼神モード突入?
元々強いのがここにきて更に強くなってるような(^^;)